韓国の88万ウォン世代

学年主任 原田 宏明

大いに盛り上がったUSJでの課外活動も終わり、とうとう高校3年間の楽しみな行事は全て終わってしまった。思い出は思い出として大切に胸の中にしまい、いよいよ受験に向かって集中力を高めていかなくてならない。

先月の体育祭ではさすが3年生というところを様々な場面で見せてもらった。まず、予行で行われた綱引きの予選で、7クラス全てが決勝に進むという快挙。そして、決勝では優勝した2組をはじめ、上位を3年生が独占した。勝負ごとは気合いがまず必要だが、戦略を考え、勝てるように持って行かないと気合いだけでは勝てない。どうしたら効率よく綱が引けるかを考え、全員が一丸となって取り組んだ結果、全ての対戦が力のこもった見応えのあるものだった。写真を見れば綱を引く体勢がいかによかったかがわかる。次に、「それいけ3年生」。どのクラスも素晴らしい演技。ひとつひとつの動きもそうだが、フォーメーションの完成度が高かった。いつ、どんな風に練習すればあのような演技ができるのかと感心させられた。4組の寸劇的要素が評価され優勝を勝ち取ったが、その一方で、7クラスの得点の差があまりなかったことがすべてのクラスの演技の完成度を示していたと思う。みんながあらゆる事に一生懸命取り組み、組織だった演技を随所で見せてくれたので、本当に楽しい体育祭だった。

さて、先日「韓国の88万ウォン世代」という記事がインターネットに載っていた。李前政権が国民所得2万ドル達成を目標にし、国内の規制緩和を進めた結果、競争が激化。また米韓FTAもそれに拍車をかけた。貿易が拡大し、大企業の競争力は強くなったが、地域の多様性や独自性が失われ、すべての富がソウルに集中。そして、そのソウルすら競争が飽和状態に達し、若者は海外へ目を向けざるをえない状況にある。良い大学を出るだけではダメなので、いい就職、いい収入を得るために韓国を脱出し、海外で職場を見つける。そのためには英語は出来て当たり前というのが最近の状況だ。しかし、世の中は成功する者ばかりではない。現在多くの若者が定職を持てず、月平均88万ウォン(約8万円)で暮らしている。当然、彼らは結婚も出来ない。地域で生まれ、地域の学校を出て、地域で結婚して一生を終える。今やそんな暮らしが韓国では難しくなっているそうだ。

日本の状況も韓国に似ている。すでに国際競争が激しい中、TPPの交渉も進み、今後さらに競争が激化することが予想される。ということは、我々も勝ち残るためには英語を修得し、いい収入を得るために日本を脱出しなければならなくなるのであろうか。そして、競争に出遅れれば低賃金で働かざるを得ないワーキングプアになってしまうのだろうか。様々な行事で一丸となってレベルの高いものを作ってき君たちには、ぜひ勉学に励んでもらって、いい日本を作る担い手になってもらいたいと密かに思っている。

学年通信『樹』第33号より